★金融コラムC

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では先週の予告どおり、バブル期以後に政府が投資したお金がどこに行ったのか、について語りたいと思います。

 いわゆる湾岸戦争以降、落込みのきざしを見せ始めた日本経済復活のため、何百兆円というお金が公共投資に消えていきましたが、その投資は、ほとんどが国民の貯蓄に回っていったと言われています。
 いわゆる「限界消費性向」という言葉をみなさんご存知でしょうか?追加的収入が家計に入ってきた場合にどのくらいが消費に回されるかという指標です。簡単なモデルでいうと、仮に1万円の減税が行われたとして4000円が消費、6000円が貯蓄に回されたなら、限界消費性向は0.4(40%)となります。
 日本の場合、この限界消費性向が低いことが一般に知られています。つまりアメリカなどに比べ、減税効果が薄く財政政策の効果が薄い、ということになります(勿論国際的な金利裁定や、その他複雑系経済のことを考えれば一概には言えませんが、こういった一面を否定できないのも事実であると筆者は認識しています)。
 つまり分かりやすく言うと、財政による投資が行われたとしてもそのほとんどは使われずに貯蓄に回ってしまうことになります。加えて、仮に投資が貯蓄に回らず消費に回ったとしても、マクロ経済のマンデルフレミングモデル(小国・変動相場・資本移動完全の前提)では、財政政策は無効ということになります。
 ではなぜ貯蓄に回ってしまったのでしょうか?それは投資が公共事業に偏っていたからだと言われています。
例えば政府が公共事業を行い民間から10億円の土地を買ったとします。当然元の地主は代金を受取りますが、ほとんどのケース、銀行の預金口座にそのまま預金されます。果たしてそこから何らかの経済波及効果があるでしょうか?そう、ありません。結局代金は銀行に現金が眠ったままになります。
これなら大袈裟な話、10億円のイベントを開いて大勢の人間に本当のCashとして、ばらまいた方がそれぞれでお金が還流しますから、経済効果が見込めるわけです。
 「じゃあ土地に投資しなければいい」と誰でも考えますが、そういう政策的な声に押されてクローズアップされた言葉が、「真水」(まみず)です。これは補正予算の編成時に一昔前よく言われてましたが(最近言われないのが気になるが・・)、公共投資から土地の買収金などの金額を引いた、より効果の高い投資の純金額を言い表したものです。
 「じゃあ真水を増やしたらいいじゃないか!」と怒る読者の方もいらっしゃるかもしれませんが、そうならないのが世の中なのです。原因は色々ありますが、
1. 方法がない。より効果的な公共投資の手段が無い。
2. 政治的に困る。もっと細かく言えば公共投資してくれないと困る政治家の方も多い。

2.については、いつか話しますが、1も事実なんです。地方レベルの政策ではちっちゃな事業を精査して起こすことも可能ですが、国家レベルでは結構方法がないと思いますよ。(戦前の一部の国や日本の高度成長期のように、強力な指導者の下、強硬な事をやってのければ、考えれなくもないですが、状況も違いますし、現実的ではありません。)。それに官僚の人だって、陳情とかの方が実態把握するのも簡単でしょう。普通に考えて。

こうして90年代の日本は、公共投資が貯蓄に消え続け、マネーサプライが増えていき、ひいては中央銀行の政策決定も、いわゆる「流動性のわな」(金利感応性の低下。IS-LM分析の分野です)へと陥ってしまったのです。

悲観的な文章になってしまいましたが、1つフォローしておくと、国家的な公共事業・財政政策の限界(ある意味大きな政府の限界)は官僚の皆さんも感じておられるのか、近年叫ばれている地方分権・市町村合併の話も、こういった事情を反映したものです。知らない間に世の中は少しずつ変わろうとはしているのかもしれませんね。

では次回は前々回の予告どおり、不良債権問題とは何だったのか?についてお話したいと思います。

注:IS-LM分析等マクロ経済について興味のある方は、いろいろな本を参考にされて下さい。少なくとも将来のある学生さんにはお勧めです。公務員試験にも役立つでしょう。

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マクロ経済学 ( 著者: 資格試験研究会 | 出版社: 実務教育出版 )

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This essay is update on Jun.26,2004
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