★金融コラムB

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では予告どおり政治経済学の話をします。
断っておきますが、狭義の政治経済学のお話しです。つまりマルクスを語るわけではありません。

さて、前回私は「そもそもここまで財政状態が悪化してくると、打てる手段が無くなってくる」と言いました。今国家の財政は、高齢化社会・低い出生率等を背景に火の車です(原因は他にたくさんありますけど)。通常財政政策というものはビルトイン・スタビライザーの機能を果たすというのが建前です。ただバブル期の財政政策の失敗(ある意味不良債権問題の失敗)により財政は支出せども実体経済上向かず、の状態になってしまいました。
振り返ってみると、私が子供の頃は国家予算って60兆円ぐらいだったんですけど、今80兆円を超えてるんですよ。単純な見方ですけど20年前から物価って1.3倍になりました?(自販機のジュースは100円から120円になったけど・・)。なってないですよねー。
(こんな事をいうと、経済のグローバル化など当時と状況が違う!とお叱りを受けそうですが)
その結果国債という借金だけが後の世代に残されてしまい、今じゃ補正予算も気軽に組むのも気が引けるのではないでしょうか?

ここで3つ疑問が。
1.なぜ90年代後半の景気浮揚政策は失敗したのか?
2.政策の中で投入されたお金はどこに行ったのか?
3.不良債権問題とは何だったのか?

2,3については長くなるので、次回以降に回します。
1についてですが、これも話せば90年代前半の日米経済協議やMicrosoftの台頭など
から始めなくてはならないので、細かい部分についてはまた別の機会にお話ししますが、1つ要因としてここでは「財政と金融の分離」問題へと続く政府と日銀の連携ミスを取り上げたいと思います。
政治経済学的に政府は選挙で勝つために、結構手段を選ばず積極財政を展開します。さらには日銀に対して圧力をかけ、とりあえず効果うんぬんの前に金融政策の緩和を求めます。しかし日銀にもプライドがありますから(金利の引下余地も残しておきたいですし)、なかなか政府の話にも首を縦に振ることはありません(バブル期の失敗の後遺症もあるのですが)。こうして政府と日銀の関係はギクシャクしたものになり、財政と金融の分離(広義)へと帰していくのです。
ただ、今もインフレターゲット政策の絡みでこの問題は再燃しています。再度金融と財政を一体化しようというものです。彼らの主張は、一部の国のように政府が政策目的を決定し、その上で中央銀行がその目的にあわせた手段・政策を決めるべきだ、だから日銀から政策に関する決定権をとりあげてしまおう、というものです。
しかし個人的にはこの意見に反対です。この国の状況を鑑みるに今の政治家は「政治家」というよりも「政治屋」の方が多く、その力を濫用する懸念が非常に強いように思います。

例えば政府・与党の要人が、自分が次の選挙で当選するために地元への公共投資と、選挙資金の捻出を画策したとします。しかし地元への予算を勝ち取るためには、政府が財政出動に積極的である必要があり、財政が積極的であるためには市場金利が低いことが、その必要条件であったとします(国債の利子負担を軽減するため)。
ここで政治屋(もしくはそのブレーン)が思いつくのは、政策金利に関する自身の発言です。政府要人は公の場で日銀に「景気浮揚のために政策金利を引下げる必要がある」と発言する事で、日銀がすぐに応じなくても、少なくともその情勢を作り出すことが可能です。これが、中央銀行が金融庁(or財務省)の傘下置かれている状態だったら、その影響力は尚更です。
更にはこの発言をする前に政治家が債券市場で債券を買っていれば、発言後、金利下降局面では債券価格が上昇するので、あわよくば差益で選挙資金も捻出できるのです。
「それはインサイダー取引では?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、政治屋の方はあくまで一般的な事を発言されただけですので、立件するのは非常に困難でしょう。だから国会議員の株・債券の保有を批判する方はこういうケースを想定しているのではないでしょうか。
(昨今は国会議員の方だけではなく、有名民間シンクタンクの方もレポートを世間に発表する事で、こういう芸当(情報操作)ができるようで、毎日切磋琢磨していらっしゃるかもしれません。)
 という理由で政治の介入が金融政策に混乱をもたらす為、金融の統合には個人的に反対です。

政治経済学の話はここまでにして、次回以降は残りの2つの疑問について検証を試みます。

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This essay is update on Jun.19,2004
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